◆医薬品の生産管理における課題とは?生産管理システム導入のメリットも解説
製造業において、生産管理の効率化は利益向上のために不可欠といえるでしょう。しかし、医薬品の製造現場では、いまだにアナログな管理がされていることが少なくありません。
その背景には、医薬品ならではの製造工程の複雑さに加え、法規制などの留意事項の多さがあります。
とはいえ、近年医薬品の需要は拡大しており、品質を担保した安定供給のためには正確かつ効率的な生産管理が欠かせません。その実現には、どのような課題解決が必要なのでしょうか。
本記事では、医薬品製造業における生産管理の課題と「生産管理システム」導入のメリットについて解説し、併せて医薬品・化粧品・健康食品に特化した製造業向けERP生産管理システム「JIPROS」も紹介します。生産管理システムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
まずは、プロセス製造業(形が一定ではない材料を反応・合成させて製品をつくる業種)である医薬品製造の現場において、生産管理業務が抱えやすい8つの課題について解説していきます。
◇ヒューマンエラーの発生
生産管理業務を人が行なう場合に起こりえるヒューマンエラー(人的ミス)としては、記入ミスや認識違い、発注漏れ、作業ミス、情報伝達ミスなど、さまざまなものがあります。
人が作業を行なう以上、ヒューマンエラーは避けて通れません。このエラーを予防するためには、複数回の確認作業や別の人員による確認・承認、作業者の訓練、業務の見直しなどが必要であり、多くの手間と時間を必要とします。
◇在庫管理が困難
製造業の在庫管理の特徴として、売るモノと仕入れるモノが異なる点が挙げられるでしょう。特に医薬品製造業では、原料やバルク(半製品)、製品、資材など、管理すべきモノが多く、その管理方法も多岐にわたるため複雑です。場合によっては、過剰在庫や欠品が発生してしまうこともあります。
過剰在庫は保管効率の低下だけでなく、保管コストの増加も引き起こします。品質を落とさずかつ欠品のないように管理するためには、難度の高い綿密な在庫計画の立案・実施が求められます。
◇正確な原価管理が難しい
生産管理においては、適正な価格の策定やコストの見直し、収益アップのための正確な原価管理も欠かせません。
しかし、医薬品製造ではその工程が複雑な分、間接費(どの製品の製造に使われたかわからない費用)を含めた原価管理が難しくなっている現状があります。
それに加え、昨今の薬価引き下げも大きな問題です。これまでよりも薬価が下がっているなかでメーカーが収益を得るには、原価を見直し引き下げるほかありません。
このような原価管理における課題も、簡単に解決できるものではないでしょう。
◇品質管理に手間がかかる
医薬品製造においては、当然ながら厳格な品質管理が必要です。製造業者としてGMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)を遵守することはもちろん、製造販売業者であればGQP(製造販売品質保証基準)も守らなければなりません。
さらに実際の品質管理業務では、原料やバルク、製品、資材など管理すべきモノが多く、各種検査やそれにともなうデータも膨大です。また、原料やバルクは保管方法・保管場所にも留意しなければならず、手間と時間、人件費などのコストが課題になります。
◇工程管理に手間がかかる
医薬品製造は、その他の製造業よりも工程が多く複雑なため、工程管理も簡単ではありません。例えば固形剤製造の場合、原料や資材の受け入れ検査のあとに以下のような工程があります。
1、 秤量 (各原料をふるいにかけ、計量)
2、 造粒 (原料を粉末から顆粒に加工)
3、 混合 (添加物と均一に混ぜる)
4、 打錠・コーティング(成型し、必要に応じて表面に膜を造る)
5、 印刷・検査(錠剤に文字を印刷し、異物や欠けの有無を確認)
原薬や液剤など、医薬品の形状・タイプでも製造工程は変わり、さらにこのあとに充填や包装、出荷前検査が続きます。
こうした手間のかかる工程管理を、いまだにエクセルや紙ベースで行なっている企業は少なくありません。
◇不良率が改善しない
不良の発生は製造業においてつきものであり、不良率の改善は製品を問わず共通の課題だといえるでしょう。ここでよく用いられるのが、「5M+1E」という用語です。
5M+1Eとは、Man(人)、Machine(機械・設備)、Method(方法)、Material (原料と材料)、Measurement (測定・検査)、Environment(環境)を指します。製造工程における不良の発生要因の多くは、これらのいずれかに分類できるといわれています。
たしかに5M+1Eに着目することは、不良原因の明確化や改善の助けになるでしょう。しかし、モノが多く工程が複雑な医薬品製造の場合は、5M+1Eのどこで不良が起きてもおかしくありません。そのため原因特定が難しく、不良率の改善も進めづらいのです。
また前述のとおり、製造工程の管理方法に課題がある以上、不良・トラブルの確認、早急な連携方法についても見直す必要があるでしょう。
◇部署間の情報共有不足
生産活動にかかわる部署間のコミュニケーション不足も、生産管理における課題です。日頃から連携を取れるような環境が整備されていないと、部署間で十分な情報共有ができず、進捗管理などに問題が起きることがあります。
また、昨今は部署によって業務の最適化が進んでいる企業もあり、部署ごとに管理表を作成したり異なるツールを使用したりしていることも少なくありません。各部署で管理する情報が異なると、認識のズレが生じてしまうこともあるでしょう。
このように、タイムリーな情報伝達が行なわれなかった結果、生産活動に影響が出てしまうことも考えられます。
◇生産管理業務の属人化
管理内容の情報共有がうまくいかないことで、業務が特定の人物や部署に集中する、いわゆる「属人化」が起きやすくなります。
業務の属人化にはさまざまなリスクがありますが、その一つが担当者の不在・変更です。各人が抱えている業務を誰も把握できていなければ、その確認・引き継ぎに時間やコストなどの大幅なロスが発生してしまいます。
また、属人化によって当事者以外のチェックが入らず、トラブルの発生率が上がることもあります。その対処に時間がかかってしまうのも、大きなデメリットといえるでしょう。業務が不透明になることで、担当者の正当な評価が困難になることも忘れてはいけません。
続いては、生産管理が抱える課題に対する改善方法や対処方法を3つ紹介します。
◇PDCAサイクルを確立・徹底する
PDCAは「Plan・Do・Check・Action」の略で、それぞれ「計画・実行・評価・改善」を意味します。そしてPDCAサイクルとは、これらを繰り返すことで業務を適正に改善していくプロセスのことです。
生産管理における課題に対処するのであれば、このPDCAサイクルを確立し、徹底していきましょう。もちろんそのためには、PDCAサイクルを安定して行なえる環境づくりも必要です。
◇業務を標準化する
業務内容をマニュアルに残すなど、標準化(テンプレート化)しながら共有することで、属人化を防ぐことができます。それぞれの担当者に偏っていた負担が減ると同時に、業務内容の可視化も実現し、課題に対する改善策も提案しやすくなるでしょう。
加えて、作業時間の短縮や作業品質の向上、従業員の教育コストの削減などにもつながります。
◇生産管理システムを導入する
生産管理システムとは、生産管理業務において必要な情報を一元管理できるシステムのことです。生産計画や購買管理、在庫管理、品質管理、原価管理などの情報をまとめることで、生産活動にかかわるあらゆる情報を可視化できます。
システムを活用して情報をしっかり管理することで、生産管理において重要なQCD(Q:品質、C:原価、D:納期)の最適化のほか、顧客のニーズを満たすことも可能になります。結果的に、業務効率と業績のアップも実現できるでしょう。
続いて、生産管理システム導入におけるメリットとデメリットをそれぞれ解説していきます。
◇メリット:生産性・品質の向上と属人化の予防
生産管理業務をシステム化することで、これまで手間がかかっていた品質・工程・原価などの管理業務を効率的に進めることができます。また、生産管理にかかわるあらゆる情報を一元管理して可視化することで、生産効率もアップするでしょう。
さらにシステムを導入すれば、エクセルなどでの数値管理も不要になります。これにより手入力作業が減り、ヒューマンエラーの削減と同時に、現場のペーパーレス化も進められるでしょう。工程中のエラーも発見しやすくなり、不良率の改善にもつながります。
情報を可視化してアクセス性を高めることは、業務の属人化の予防にもなります。部署間の情報共有がスムーズになれば、トラブルにも迅速に対応できるはずです。
以上から、生産管理システムは生産管理業務が抱えるさまざまな課題の解決に役立ちます。
◇デメリット:導入コストがかかる
生産管理導入には多くのメリットがある反面、デメリットもあります。
導入コストはもちろんランニングコストがかかるため、慎重な検討とシミュレーションが必要になります。また、業種にあったシステムでなければ導入してもうまく活用できないため、システム選定も慎重に行なわなければなりません。
また、システムの導入から運用にかけては、知識とスキルを持った専任者が必要になるでしょう。専任者がいない場合には、新たに人材を採用するか、サポートが充実したシステムを選ぶ必要があります。
さらに、現場の従業員への研修も不可欠です。結果的に作業者の負担が増えるリスクがあることも、無視できないデメリットといえるでしょう。
■医薬品製造業に特化した生産システムなら「JIPROS」がおすすめ
生産管理システムの導入を検討しているなら、日本電子計算株式会社(JIP)のJIPROSがおすすめです。ここでは、JIPROSの特徴を解説していきます。
◇医薬品含む中堅プロセス製造業に特化
JIPROSは、中堅プロセス製造業のために開発された統合管理パッケージで、なかでも医薬品・化粧品・健康食品特有の生産モデルに特化したシステムです。
医薬品製造では欠かせない厳格な品質管理も可能で、工程中のあらゆる検査情報を一元管理して品質管理業務を支援します。ロットトレーサビリティの確保はもちろん、GMP対応もサポートし、安心して導入できるパッケージ製品です。
また、JIPROSは医薬品製造業に求められるバリデーション(設備や手順、工程などの製造管理や品質管理が適切であることを検証し、文書に残すこと)も強力に支援します。確実な品質を確保しつつ、手間と時間などのコストを抑えた品質管理を実現できるでしょう。
◇豊富な機能で各工程をサポート
JIPROSは医薬品製造に必要な機能を標準装備しているため、最小限のカスタマイズで導入が可能です。手間と時間をかけることなく、複雑な工程・作業も効率的に進められます。
さらに、簡易秤量やミス防止機能(バーコード管理、ハンディーターミナル)、ペーパーレスソリューションなどのオプション機能・製品も充実。基本システムと連携すれば、より事業にマッチするシステムを構築できます。
◇手厚いサポート体制
医薬品製造業において生産管理システムを導入する場合、業界のノウハウやGMP規制に準じた導入手法、ハードウェアについてなど、システム運用にかかわるさまざまな知識が必要です。これらに精通した専任者がいない場合、システム導入のハードルはかなり高くなってしまいます。
その点、JIPROSならJIPによるワンストップ導入を利用できます。契約から導入、運用のサポートまでのすべてをJIPに任せられるため、システムの専任者が置けない環境でも導入が可能となります。また、バリデーションプロセスを統合した「JIPROS標準導入手法」を利用して導入を推進するため、随時変化するGMP規制要件にも問題なく対応可能です。
さらに、サーバー運用や障害対応など、パッケージ以外でのサポートも充実しており、詳細な知識がない方でもスムーズに運用できます。
厳格な品質管理が求められ、製造工程も複雑な医薬品製造業では、生産管理においてさまざまな課題があります。
その解決には、PDCAサイクルの徹底などのほか、生産管理システムの導入がおすすめです。生産管理にかかわる情報を一元管理して可視化することで、作業の属人化を予防できるとともに、生産効率も上げられるでしょう。
医薬品の生産モデルに特化したJIPROSなら、豊富な機能と手厚いサポートでスムーズな運用が可能です。生産管理システム導入を考えている方は、ぜひ検討してください。