◆生産管理システムは化粧品メーカーに必要｜導入するメリットや選び方を解説
化粧品メーカーには、品質管理や在庫管理などさまざまな課題があります。そこで有効活用したいのが、化粧品業界に合った生産管理システムの活用です。生産管理システムを導入することで、品質管理や在庫管理といった業務効率が上がるだけではなく、手動で行なってきた作業をシステムが自動的に行なうことで多くのミスを防いでくれます。
この記事では、化粧品メーカーに生産管理システムが必要な理由やメリット、選び方を解説するので、ぜひ導入時の参考にしてみてください。
バリデーションは、医薬品・化粧品業界において生産管理のための重要な工程です。ここでは、バリデーションの概要と必要とされる理由について解説します。
◇バリデーションとは
生産管理システムは、生産にかかわる業務を一元管理するものです。導入することで、品質だけではなく在庫データなど、従来は人が行なっていたものをシステムで管理できるようになります。
具体的に挙げられる活用場面は、販売管理・計画立案・MRP・購買管理・製造管理・品質管理・在庫管理・原価管理など多岐にわたります。煩雑な管理業務に対してシステムを有効活用することで、業務の効率化が図れるとともに、人的リソースの配置転換にもつながります。
このようにメリットが多い生産管理システムは、現在、化粧品業界に限らず、さまざまな製造業で必要不可欠な存在となりつつあります。
数ある製造業のなかでも、特に化粧品メーカーに生産管理システムが必要な理由を解説します。
ここでは、バリデーションの実施に必要な工程と実施方法、その目的について解説します。
◇品質管理
化粧品は肌に直接触れることから、特に安全性の高さが重視される製品です。しかし、原材料や含有成分など管理すべき部分が非常に多く、人の目では完璧に管理できません。
原料が多いことから、間違った原料が混入してしまう危険性もあります。間違って配合したことに気づかず化粧品を出荷、販売してしまうと、メーカーとして直接的、間接的な損失は計り知れないでしょう。さらには、製造過程で間違って配合したことが発覚した場合は、その商品は廃棄しなければなりません。
そのため、品質管理は化粧品メーカーにとって最も重視すべき点であり、メーカーとしての成長を続けるためにも費用を投じるべき部分です。
◇的確なコスト配分
的確なコスト配分を実現することも、化粧品メーカーにおいての課題の一つです。
化粧品は、基礎化粧品とメイクアップ化粧品に大きく分類できます。基礎化粧品の場合は原材料がシンプルで比較的管理は容易ですが、メイクアップ化粧品は色の種類などが多く管理がより複雑になることが特徴です。
そこで生産管理システムを活用して、余剰在庫や必要以上にかかっていた作業や設備の稼働時間などを削減できれば、本来、必要な部分にかけられるコストを確保できるようになります。
◇在庫管理
化粧品には使用期限があり年月が経過するほど劣化するため、過剰に在庫をストックしていると、廃棄による無駄な損失が出る可能性が高まります。しかし、人の手だけで作業を行なっていると適切な在庫管理がなかなか実現せず、気付かないうちに消費期限を迎えてしまうこともあります。その一方で、在庫が足りない場合は機会損失を生んでしまうこともあるでしょう。
利益を最適化する在庫管理を行なうには、生産管理システムの導入は必須といえます。
◇記録
化粧品業界では、製品がどこで誰によって製造され消費されたのか、その製造から消費までの経路を明らかにする「トレーサビリティ」が重視されます。記録するべき情報は、原材料の仕入れ先や入庫日、化粧品の製造工程から出荷に関する情報などさまざまです。トレーサビリティを徹底することで、なにか問題があった際にも、原因を突き止めやすくなります。
しかし、煩雑になりがちなトレーサビリティを、すべて手入力で管理するには限界があるでしょう。生産管理システムを導入することで管理の手間が省けるだけではなく、トレーサビリティが徹底され、結果としてメーカーの信頼度を高められます。
生産管理システムの導入には、ある程度の費用が必要です。しかし、相応の費用をかけてでも導入するメリットは非常に大きいものです。
具体的なメリットを見ていきましょう。
◇品質管理の効率化
まず挙げられるのは、品質管理業務の効率化です。
化粧品の品質管理基準には「ISO9001（品質マネジメントシステム）」「ISO22716（化粧品GMP）」「GQP（Good Quality Practice）省令」などがあります。アナログな方法では、これらに則った品質管理の実現は難しい部分があります。
化粧品製造における管理対象は、原料の検査の管理から完成品の使用期限など多岐にわたるため、非常に手間のかかる作業です。生産管理システムを導入することで品質管理業務の効率化が可能になります。
◇適正な在庫管理
化粧品には使用期限があることから、単純に生産数を増やすことは使用期限が切れる恐れがあるため、適切ではありません。そこで、生産管理システムを導入することで、人が管理するよりも的確な在庫管理が可能になります。
システム上で過不足が発生しないように発注量を計算するため機会損失も廃棄も最小限に抑えられます。また、化粧品製造において特に重要なトレーサビリティの徹底にもつながるため、メーカーとしての信頼性も高まるでしょう。
◇業務の効率化
生産管理システムは、製造に関する情報をシステムで一元管理することにより、経営判断に必要なデータが得られるようになります。
業務に対して適切な計画を練ることで必要なリソースを最適化でき、ヒューマンエラーを最小限に抑えることも可能です。継続することで、将来的な人件費の削減にもつながるでしょう。
◇DX促進
近年さまざまな業界で、DX（デジタルトランスフォーメーション）が進められています。DX促進のメリットは、業務の正確性や効率の向上です。
生産管理システムの導入によってデータを集約して可視化し、さらには周辺システムへ情報を連携し、活用することはまさにDXの促進です。DXを進めることで、経済産業省が提唱する「2025年の崖※」の対策の一つとできるでしょう。
※日本企業のDX化が進まなければ、2025年以降に年間12兆円もの経済損失が発生するという予測
化粧品メーカーが生産管理システムを選ぶ際には、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。チェックしたい点としては、以下が挙げられます。
◇導入する必要性や目的を明確にする
まずは、生産管理システムを導入する必要性や目的を明確にしましょう。例えば、「品質管理に問題がある」「5年後に生産量を～倍にする」といったように、自社全体の経営課題を考えてみてください。経営課題を洗い出し、それに伴う現場の問題を洗い出せば、自然と必要な機能が明確になってくるでしょう。
また、ニーズにマッチしていない生産管理システムを導入した場合、かえって生産効率が下がってしまう可能性もあります。生産管理システムは、必要性と目的を明確にしたうえで総合的に判断すべきです。
◇自社に合った生産管理システムを選択する
生産管理システムの種類は多く、どれを選択しても良いわけではありません。あくまで自社に合ったシステムを導入する必要があります。
例えば、自社の規模に合っていないフルスペックの生産管理システムであれば、使わない機能が多く出てくるでしょう。機能が多すぎて、使いこなせないかもしれません。
反対に、必要な機能が不足しているシステムも避けましょう。価格が安いからといって必要としている機能が搭載されていなければ、生産管理システムを導入するメリットが薄れてしまいます。
また、パッケージシステムの場合、機能をカスタマイズできるかどうかもチェックしましょう。自社の製品や製造工程に合わせてシステムをカスタマイズしなければならない場合、カスタマイズできれば、生産管理の効率はより向上します。
◇サポート
システムに不具合が発生したときや不明な点があったとき、どれだけ迅速に、どこまでサポートしているのかを確認しておきましょう。問い合わせの手段は電話・メール・チャットのどれなのか、対応可能な時間帯なども重要な点です。
業務に対して生産管理システムに依存する範囲が大きい分、一度トラブルが起こると大きな損失が発生する可能性があります。サポートの内容は各サービスで異なるので、必ず確認することをおすすめします。
◇セキュリティ対策
化粧品メーカーは、秘密性の高いデータを持っていることも多くあります。サイバー攻撃などによって情報が漏洩してしまうと、オリジナル製品の価値が低くなる可能性や、消費者や取引先からの信用を失う可能性も考えられます。
そのため、生産管理システムのセキュリティ対策は必ず確認しておきたい部分です。ただし、システム側の対策のみで安心するのではなく、従業員にセキュリティ教育を行なうなど、サイバー攻撃に関する最低限の知識は持っておいたほうがよいでしょう。
常に高い品質管理を求められる化粧品メーカーにとって、生産管理システムはぜひとも導入したいものです。導入するためにコストはある程度かかるものの、在庫の過不足がある状態の解消や品質管理の精度の向上など、売上につながる部分で大きな改善が見込めます。
今回の記事を、自社に必要な生産管理システム選びの参考にしてください。