◆製造業で削減しやすいコストは?削減のポイントやおすすめツールも紹介

2022年の企業活動基本調査確報によると、製造業の原価率は約80%と有形商材を扱う分高い傾向にあります。利益を確保するには、製造コストの削減が重要です。
しかし原価率が高いことは、それだけ必要不可欠なコストも多いことを意味します。そのため製造業においては、削減するべきコストを見極める必要があります。
この記事では、製造業で削減しやすいコストと削減しにくいコスト、削減を進める際のポイントを解説します。コスト削減に役立つシステムも紹介するため、経営層・マネジメント層の方はぜひご覧ください。
製造業におけるコストの種類は製造原価と販売管理費の2つに分けられます。
◇製品を作るためのコスト:製造原価
製造原価とは、製品の製造に直接かかわるコストのことです。製造原価は大きく材料費、労務費、経費の3大要素に分けられます。
材料費には文字どおり材料や部品、製造に必要な消耗品などが含まれます。労務費は人件費のことであり、月給だけでなく賞与や福利厚生費も、含みます。
経費は材料費や労務費に含まれない費用です。具体的には賃料や光熱費、外注費、減価償却料などがあります。
なお原価の計算方法には、あらかじめ見積もった理論上のコストである標準原価計算と、実績ベースで計算する実際原価計算があります。コスト管理をするときには、標準原価と実際原価の差分を分析し、見積もりや製造工程、発注内容の見直しを行なうのが大切です。
弊社が提供する統合管理パッケージJIPROSは、実際原価と標準原価機能を搭載しており、最適なコスト管理をサポートします。
◇企業経営のコスト:販売管理費
販売管理費とは製品の販売にかかったコストのことです。営業活動に直接かかった販売費だけでなく、企業運営に欠かせない一般管理費も含みます。
販売費の具体例は、以下のとおりです。
・広告宣伝費・CM費
・営業部門の人件費
・運送料
・事務用品 など
一般管理費は、製造した製品の在庫管理や従業員管理などにかかる、管理コストのことです。具体的にはバックオフィスの人員の人件費や賃貸料、水道光熱費などが挙げられます。 販売費は景気や業績によって上下する傾向であるのに対し、一般管理費はある程度安定していることが特徴です。
コスト削減のためには、製造原価と販売管理費の両方を最適化する必要があります。

原価率の低減のため、あらゆる面でコストカットを考えると思います。しかし製造業のコストには、削減しやすいものと削減しにくいものがあり、両者の見極めが必要です。
以下では、削減をしやすいコストと、削減しにくいコストを解説します。
◇削減しやすいのは販管費や外注費
製造業で削減しやすいコストは、料金を抑えても品質が落ちにくい費用です。具体的には、以下が挙げられます。
・水道光熱費
・通信費
・消耗品費(製造に関与していないオフィス用品、管理部門の消耗品など)
・効果の上がっていない広告宣伝費
・外注費
水道光熱費や通信費は他社への乗り換えで、今までと同じ品質かつ安い料金で使用できる可能性があります。長らく料金を見直していない場合は、よりお得なプランがないか確認してみましょう。電気代であれば、LED照明への切り替えもおすすめです。
消耗品費は、従業員へ節約意識を呼びかけることで、ある程度の削減が期待できます。広告宣伝費を見直す場合は、施策ごとに効果測定を行ない、必要に応じて広告の掲載先や営業手法の変更を検討しましょう。
外注費については、自社で対応できる部分と対応できない部分を明確にし、前者に関する外注は内製化するのが有効です。ただし、自社のリソース状況に合わせて施策を練った上で、慎重な判断が必要です。
◇削減しにくいのは人件費や材料費などの製造原価
削減しにくいコストは、製品の品質に直接かかわる製造原価がメインです。具体的には材料費と労務費が挙げられます。
材料費の削減には仕入れ先との交渉が必要ですが、簡単には応じてくれないでしょう。仕入れ先を変えるにしても、品質の見極めと選定に手間がかかります。
また労務費をカットとなると、従業員のモチベーション低下や離職の懸念があり、生産性の悪化を招きかねません。代替案としては、マニュアルの整備による新人の教育費の削減や、ITツールを用いた業務効率化による従業員の残業代の削減などが考えられます。
また、品質を損なわずコストを削減する新しい業務フローの構築も有効です。一度仕組みができれば長期的に利益をもたらしてくれますが、構築には時間がかかるため、長い目線での取り組みが求められます。

コスト削減をするうえで押さえるべきポイントを4つ解説します。
◇7つのムダを基準に削減するコストを見つける
7つのムダとは、製造業におけるムダを、以下の7つに定義しています。
・加工のムダ
・手持ちのムダ
・作りすぎのムダ
・運搬のムダ
・在庫のムダ
・動作のムダ
・不良品・手直しのムダ
加工のムダとは、製造工程において余計な作業や加工のことです。具体的には、不要な検査や仕上げ作業が当てはまり、品質管理標準が決まっていないときに発生しやすいです。
手持ちのムダとは従業員にやることがなく、何もしていない状態を指します。従業員が必要以上に時間をかけて作業をすると手持ちのムダが見かけ上ないように見えるため、1タスクごとの所要時間を明確にするのが重要です。
作りすぎのムダは在庫・動作・運搬のムダも誘発するため、7つのムダのうち最も悪いとされています。タクト管理や指示系統の甘さが原因であり、必要な材料の浪費にもつながるため、最優先で解消すべき項目です。
運搬のムダは、運搬作業は製造業に欠かせませんが、付加価値を生み出しません。そのため導線・過剰包装の見直しや、効率的な生産計画を立て、運搬のムダの削減が求められます。
在庫のムダは保管場所の圧迫や、管理にかかる人件費の増大につながります。発注から納品までの生産リードタイムの短縮が有効な対策です。
動作のムダは従業員の探す・調べる・しゃがむなど、付加価値を生まない動作を指します。作業場所の整理整頓は、最も着手しやすい対策として挙げられます。
不良品・手直しのムダは損失が最も大きく、かつ完全になくすこともできない厄介なムダです。不良品の再発防止や、発生した際に被害を最小限に留める仕組み作りが求められます。
◇現状把握とコスト削減の目的を社内で共有する
コスト削減を実施するには、まず現在、何にいくらコストがかかっているのかを把握する必要があります。すべてのコストを効果的に削減するのは難しいため、インパクトの高いコストに絞って削減しましょう。
そしてコスト削減をする目的を全社に周知し、協力を仰ぐことが重要です。コスト削減には現場社員の協力が欠かせませんが、従業員が何のためにコスト削減をするのかを理解できなければ、協力を得づらいでしょう。
社員のなかには、自分の部署だけに負担が集中しないか不安に思う人がいる可能性もあります。一人ひとりに丁寧な説明を心がけ、懸念の払拭に努めましょう。
◇品質の低下につながるコスト削減はしない
安価な材料への切り替えや人件費の削減など、品質を損なう可能性のあるコスト削減は慎重になる必要があります。品質の低下は売上の減少や信用の失墜を招き、本末転倒になりえます。また、むやみな人員削減は従業員の定着率の悪化や、さらにはナレッジ継承の困難化を招きます。
また、広告宣伝費の削減にも慎重になる必要があります。売上を落とさないことを第一に、効果測定をしてパフォーマンスを評価しましょう。
◇5年単位の長期目線で考える
製造業におけるコスト削減は、一朝一夕では効果が表れにくいものです。そのため5年スパンの長期的な目線で施策を策定し、効果測定と改善を根気良く続けることが大切です。
例えば、研究開発が現在芳しい効果を上げていなくても、すぐに見切りをつけるのではなく、長期的に見て利益が見込めそうであれば継続して投資をするべきです。その他、DXツールを導入する際も、少なからぬ初期投資がかかります。しかし長期的にみて、初期コストをペイできる日が来ると想定できるなら、無駄なコストとはいえません。

製造業を営む事業者で、コスト削減を検討しているなら、統合管理パッケージ「JIPROS」の活用がおすすめです。JIPROSは医薬品や化粧品・食品メーカー向けの生産管理システムで、GMP関連企業様に向けの生産・原価・販売管理機能を搭載しています。原価管理機能に加えて、検査関連機能などを、コンパクトにワンパッケージで利用できます。GMP支援機能を活用することで、各業界において他社との差別化を図れるでしょう。
その他にも、生産計画の立案やコスト分析機能などにより、責任者や経営層の意思決定をサポートします。システム担当者が不在の際でも、運用できる体制作りを支援します。
JIPROSを活用したお客様の導入事例はこちらをご参照ください。
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原価率の高い製造業で利益を確保するためには、適切なコストカットが必要です。しかし品質の低下につながる、人件費や材料費など削るべきではないコストも存在します。
原価率を低減するためには、7つのムダを参考に自社の現状を把握し、優先順位を付けて施策を策定しましょう。弊社が提供する統合管理パッケージJIPROSは、実際原価と標準原価機能を搭載しており、最適なコスト管理をサポートし、現状の把握に役立ちます。
コスト削減には従業員の協力が不可欠です。コスト削減の目的を周知し、全社一丸となって取り組んでみてはいかがでしょうか。