コラム

◆プロセス製造業におけるトレーサビリティとは?必要性やメリットを解説

2025/02/26
プロセス製造業におけるトレーサビリティとは?必要性やメリットを解説

トレーサビリティとは、製品が製造され消費者の手に届くまでの過程を記録し、追跡可能な状態にすることを指します。製品の安全性確保や不良品発生時の迅速な対応には、トレーサビリティが不可欠です。

本記事では、トレーサビリティの概要や必要性、導入におけるメリット、課題を解説します。トレーサビリティの導入には多くの利点がある一方で、いくつかの課題もあるため、導入を検討している方はぜひご一読ください。

■トレーサビリティとは?概要と必要性

ここでは、トレーサビリティの概要とその必要性について解説します。

◇トレーサビリティとは

トレーサビリティは、「トレース(追跡)」と「アビリティ(能力)」という単語を組み合わせた言葉であり、日本語では「追跡可能性」ともいいます。

医薬品・化粧品・食品といったプロセス製造業(形が一定でない原材料を混合して製品を製造する業種)では、原材料調達から生産、流通、消費・廃棄までを記録し、追跡可能な状態にするシステムを構築することを指します。

◇プロセス製造業におけるトレーサビリティの必要性

トレーサビリティは、製品に事故やトラブルなどがあった際に原因を特定したり、対策を講じたりするうえで特に必要になります。プロセス製造業では、ロット別の出荷・製品・原材料情報を蓄積し、ロットレベルで追跡できるようにする「ロットトレーシング」を用いることが少なくありません。

ロットトレーシングを用いれば、賞味期限・有効期限の管理や規制物質・アレルギー物質などの制限物質管理、問い合わせ対応のための管理などにより、あらゆる内容を確認することが可能です。

ロットの回収依頼があった際や自社製品にアレルギー物質の混入があった際には、迅速に対応しなければなりません。その際にロットトレーシングを利用することで、速やかに該当するロットを特定し、回収を依頼する販売先を絞り込む、代替品を届けるといった対策を講じられます。

回収を依頼する自社の負担を減らせるほか、取引先からの信頼の維持にもつながるでしょう。

■トレーサビリティの手法

製品の追跡方法は、大きく分けて2つです。それぞれ、以下のような特徴があります。

・トレースフォワード:製品がどこに行くのかを追跡する手法。その原材料が使われた製品や在庫を特定する。製品回収や市場調査の際などに活用される
・トレースバック:製品がどこから来たのかを追跡する手法。トラブルの発生ポイントから遡って調査し、何に問題があったかを特定する。再発防止や品質管理の際などに活用される

■トレーサビリティの種類
トレーサビリティの種類

◇チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティとは、原材料調達から生産、流通、消費・廃棄まで、複数の企業の履歴を追跡可能にするものです。

一般的に「トレーサビリティ」と呼ぶ場合はチェーントレーサビリティのことを指し、サプライチェーンのすべての段階で製品や原材料の流れを追える状態にします。

チェーントレーサビリティによって、生産者は問題発生時の原因を究明しやすくなり、消費者は製品の詳細を確認してより安心安全な製品を選べるようになります。

◇内部トレーサビリティ
内部トレーサビリティとは、サプライチェーンにおけるすべての段階のうち、1つの工場・企業など特定の拠点内での流れが追える状態のことです。製造業でいえば、1つの工場・企業内での原材料調達から出荷までを追跡できるようにします。

サプライチェーン全体の視点を持って内部トレーサビリティに取り組むと、作業効率や品質の向上、問題発生時のスムーズな対処が可能になります。

■トレーサビリティを支える技術
プロセス製造業でトレーサビリティを実現する際には、以下のような情報伝達媒体を使用します。

プロセス製造業では、おもにラベルプリンターやレーザーマーカーでバーコードやQRコード、製品名、製造日などを印字し、製品に付けて管理するのが一般的です。バーコードリーダーなどを用いて、それぞれの工程で識別番号を読み取り、システム的に記録していきます。また、近年ではRFタグの情報を無線周波数で読み取るRFIDを導入し、複数の情報を非接触でまとめて読み取るといった効率化も進んでいます。

・バーコード、QRコード:スキャンすることで情報を取得できる。おもに小売業や物流業、製造業などで使われる
・RFID:無線周波数で情報を読み取る。おもに物流業や医療業、製造業などで使われる

■トレーサビリティ導入のメリット
トレーサビリティ導入のメリット

品質の維持・向上や問題発生時の対策の効率化など、トレーサビリティの導入には多くのメリットがあります。ここでは、トレーサビリティ導入のメリットを紹介します。

◇品質の維持・向上・不良品の流通防止
製品に問題が発生した場合、トレーサビリティによって関連の原材料のロット番号から
製造日時、製造場所などの情報を特定することができ、迅速な原因究明が期待できます。既に出荷してしまった場合でも該当の製品に回収対象をロット単位などで適切に限定して、回収することが可能です。また、トレーサビリティデータを分析することで、製造工程における問題点や改善点を発見し、品質向上に繋げることができます。

◇企業のブランドイメージ向上
トレーサビリティを明確にすると、取引先や消費者に対する製品ブランドのイメージ向上につながります。製品に関する透明性の高い情報を公開することで、企業のブランドイメージも向上するでしょう。また、製品に関する顧客からの問い合わせに対しても、トレーサビリティ情報を基に迅速かつ正確に対応することができます。

◇製造業におけるカーボンフットプリントの測定にも効果的
近年では、多くの製造業でカーボンフットプリントの測定が求められています。カーボンフットプリントとは、製品の原材料調達から生産、流通、消費、廃棄・リサイクルまでを含むライフサイクル全体を通して発生する温室効果ガスを、CO2に換算して表示する仕組みです。

製造業でカーボンフットプリントを測定する際には、特に原材料調達から流通までの過程でトレーサビリティの情報を活用できます。

■トレーサビリティ導入における課題
トレーサビリティを導入する際には、コスト面をはじめとするいくつかの課題があります。ここでは、トレーサビリティの導入にあたって発生する問題を紹介します。

プロセス製造業では、おもにラベルプリンターやレーザーマーカーでバーコードやQRコード、製品名、製造日などを印字し、製品に付けて管理するのが一般的です。バーコードリーダーなどを用いて、それぞれの工程で識別番号を読み取り、システム的に記録していきます。また、近年ではRFタグの情報を無線周波数で読み取るRFIDを導入し、複数の情報を非接触でまとめて読み取るといった効率化も進んでいます。

◇導入・運用コスト
トレーサビリティの実現には、システムの構築や運用・維持にコストがかかります。特にチェーントレーサビリティのように規模が大きなものは、コストもふくらみます。

また、トレーサビリティは「問題発生時に備えて行なっておくもの」という側面があることから、平常時は費用対効果がわかりにくい点も問題といえるでしょう。

◇ステークホルダーの多さ
チェーントレーサビリティを導入するには、すべてのステークホルダーが連携して対応しなければなりません。

しかし、製造業では原材料調達から生産、流通、消費・廃棄まで、多くの企業がかかわります。トレーサビリティに対する考え方は、企業によってそれぞれ異なると考えられるため、ステークホルダーが多いほど実現が難しくなる可能性があります。

このように課題はありますが、特に医薬品・化粧品・食品などのプロセス製造業では、品質や安全を確保するためにトレーサビリティの導入は必要です。

人手によってトレーサビリティを維持しようとすると、非常に手間がかかります。トレーサビリティの確保をサポートするのが、JIPROSおよびオプションです。

■医薬品・化粧品などのプロセス製造業におけるトレーサビリティにはJIPROS
JIPROSは、医薬品や化粧品、食品メーカー向けの統合管理パッケージです。GMP実施企業を中心に、生産・原価・販売を管理できる機能を提供しています。

JIPROSでは原材料、バルク、製品を含む検査情報を統合的に管理することが可能です。ロットトレース機能が搭載されており、原材料のロット番号から製造・出荷履歴を、出荷ロット番号から関連する子品目とロット番号、試験履歴を追跡できるなど、双方向でのトレーシングが可能です。

また、オプションとして医薬品業界データ交換システム(JD-NET)、消費財流通のEDI(PLANET)との連携を含めた構築も可能です。ハンディーターミナルオプションを活用することで、ロット番号含めた入荷実績や移動実績を容易に登録することが可能です。

そのほか、原材料の入荷、製造過程での検査、原材料の誤使用防止、出荷承認など、各プロセスでGMP管理を支援する機能を備えており、システムを含めた品質管理体制の構築が可能です。医薬品・化粧品・食品などのプロセス製造業におけるトレーサビリティ導入の際は、JIPROSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

■まとめ

医薬品・化粧品・食品などのプロセス製造業におけるトレーサビリティとは、原材料の調達生産、流通、消費・廃棄までを記録し、追跡可能な状態にすることを指します。また、トレーサビリティは、製品に事故やトラブル発生時の原因の特定や対策を行なう際に特に必要です。

トレーサビリティを確保していれば、品質の維持・向上や問題発生時の原因究明、企業のブランドイメージ向上などに役立つというメリットがあります。

一方で、平常時には費用対効果がわかりにくい点、チェーントレーサビリティではステークホルダーが多く、実現に手間がかかる点が課題といえるでしょう。

しかし、医薬品・化粧品などのプロセス製造業において、品質の安全性や信頼性を確保するためにトレーサビリティの導入は欠かせません。

トレーサビリティの確保のため、システム導入をお考えの方は、プロセス製造業向け統合管理パッケージJIPROSをぜひご検討ください。

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