◆オンプレミスとクラウドの違いとは?メリット・デメリットも徹底解説

企業がITインフラを構築する際には、「オンプレミス」と「クラウド」という2種類の選択肢があります。オンプレミスとクラウドにはそれぞれ利点があるため、選択は容易ではありません。これからITインフラの整備を考える際には、オンプレミスとクラウドの違いを理解して、どちらが自社に最適なのかを検討することが大切です。
本記事では、オンプレミスとクラウドの違い、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
まずは、オンプレミスの基本概念や導入方法について解説します。
◇オンプレミスの基本概念
オンプレミスとは、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアなどを自社内に設置し、構築や運用を自社で行なう形態を指します。オンプレミスでは、自社の設備を活用してインフラを整備し、直接管理するため、独自のカスタマイズやセキュリティ対策を自由に行なえる点が特徴です。
また、オンプレミス環境を構築する際には、自社内にサーバーを設置する以外にも「ハウジング」や「ホスティング」といった手法を利用することが可能です。「ハウジング」はデータセンターのサーバーの設置場所や電源、ネットワーク環境を借り受け、自社で保有するサーバーを外部データセンターに設置するもので、物理的な管理はデータセンター側に委ねられます。一方、「ホスティング」はデータセンターが提供するサーバーを借り受けて運用する形式で、基本、インフラの保守管理を委託することで人的コストの負担軽減が図れます。
◇導入方法
オンプレミス環境の導入には、まずサーバーの調達やシステム構築の要件定義を行なうことが重要です。システムの具体的な目的や求められる機能を明確にし、それに基づいて必要なハードウェアやソフトウェアを決定することが導入成功の鍵を握ります。要件定義では、以下の観点からどのような構成が最適かを検討する必要があります。
● パフォーマンス
● セキュリティ
● 拡張性
● 可用性 など
また、自社内でこれらの作業をすべて行なうことが難しい場合、外部の専門業者に委託するのも手段の一つです。外注の際には、まず信頼できる企業の選定が重要です。外注先を選ぶ際には、技術力やこれまでの実績、サポート体制などをよく検討し、自社のニーズに合ったパートナーを見つけることが求められます。外注先と適切な協力体制を築くことで、システム構築のスムーズな進行と安定した運用が可能になります。
次に、クラウドの基本概念や導入方法について解説します。
◇クラウドの基本概念
本記事では、クラウド事業者が提供する仮想的なインフラ(サーバー・ネットワーク・ストレージなど)上で構築することをクラウドと指すこととします。代表例としてAmazon Web Services(AWS)、Azure、Google Cloudがあります。クラウドでは、システム構築に必要なサーバー設備やネットワーク機器、ストレージなどを自社では保有せず、多くのケースにおいて、利用者はそれらのサービスを従量課金制で利用します。自社で物理的なインフラを整備する必要がないため、初期導入コストを抑えつつ、必要なリソースを柔軟に確保できることが大きな特徴です。
◇導入方法
クラウドの導入は、一般的に以下のような流れで進められます。
1. 要件定義:どの機能が必要か、セキュリティレベルはどうするかなど、導入に向けて必要な要件を明確にする
2. サービスの選定:AWSやMicrosoft Azureなど複数のクラウドサービスを比較し、料金体系やサービス内容を吟味して最適なものを選ぶ
3. アカウントの設定と環境構築:クラウドサービスでアカウントを作成し、必要な仮想マシンやネットワークを設定する
4. データの移行・システム設定:システムを構築し、必要なデータを移行する。オンプレミスからの移行の場合は、データ移行の手段や手順について慎重な計画が必要
5. テストと運用開始:構築後、動作確認を行ない、問題がないことを確認したうえで運用を開始
クラウド導入には、「ゼロから導入するパターン」と「オンプレミスから移行するパターン」があります。ゼロから導入する場合は、新たに必要な機能やリソースを定義し、それに基づいて最適なクラウド環境を構築します。一方、オンプレミスからの移行の場合は、既存システムとの互換性やデータの移行が大きな課題となるため、移行計画を慎重に立てる必要があります。
導入の際には、料金体系やサービス内容をしっかりと比較検討し、自社にとってコスト効率が良く、必要な機能が備わっているクラウドサービスを選ぶことが重要です。

項目 | オンプレミス | クラウド |
---|---|---|
コスト | 初期導入コストが高いが、長期的には固定費用で運用可能 | 初期導入コストが低く、従量課金制で年額または月額のサービス利用料がかかる |
カスタマイズ性 | 高い。自社のニーズに合わせて自由にカスタマイズ可能 | あらかじめ用意されているサービスの範囲内でのカスタマイズが可能 |
拡張性 | 拡張には物理的なハードウェアの追加が必要 | リソースの拡張が容易で、必要に応じてスケールアップ可能 |
運用管理 | 自社ですべて管理するため、メンテナンスコストがかかる | クラウド事業者が多くの管理を担うため、管理負担が軽減される |
セキュリティ | 自社内で管理できるため、独自のセキュリティ対策が可能 | クラウド事業者に依存する部分が多い |
導入スピード | 機器の調達・構築に時間がかかる | 機器の購入などを自社で行う必要がなく、短期間で利用開始できる |
オンプレミスは運営の自由度が高い一方で、初期費用や運用管理の負担が大きくなります。対してクラウドは、スピーディーに導入でき、初期費用を抑えつつ柔軟にリソースを拡張できるため、導入の手軽さやコスト効率を求める企業に適しています。しかし、カスタマイズ性においてはクラウド事業者が提供するサービス内容に制限される部分があり、必要な機能をすべて実現するには工夫が求められることもあります。
どちらの選択肢が最適かは、企業の規模、業務内容、必要なセキュリティレベルなどに応じて判断することが重要です。
以降では、オンプレミスとクラウドのメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
まずは、オンプレミスのメリットとデメリットを解説します。
◇メリット
オンプレミスのメリットは次のようになっています。
メリット | 概要 |
---|---|
独自のセキュリティ対策が可能 | ・自社内で物理的に管理できるため、外部からのアクセスを制限しやすく、高いセキュリティ対策が可能 ・独自のセキュリティポリシーに基づいて、必要な保護措置を講じられる |
カスタマイズ性が高い | ・自社のニーズに合わせて、システムを細部までカスタマイズできる点が大きな強み ・ハードウェアやソフトウェアを自由に選定・変更できるため、業務に最適なシステムを構築可能 |
既存システムとの親和性が高い | ・既存の社内システムと統合しやすく、システム間の連携を柔軟に行なえる ・自社の独自システムやレガシーシステムとの互換性を確保することで、円滑な業務運用が実現 |
オンプレミスのメリットとして、特にセキュリティやカスタマイズ性に優れている点が挙げられます。自社ですべてを管理することで、企業独自のニーズやセキュリティ要件に合った環境を実現しやすく、既存システムとスムーズに連携できる点でも有用です。
◇デメリット
オンプレミスのデメリットは次のようになっています。
デメリット | 概要 |
---|---|
初期導入・更新費用が高額 | ・サーバーやネットワーク機器などのハードウェア、ソフトウェアの導入費用が高額になりやすい ・設備更新にも定期的な追加投資が必要 |
管理するための人材が必要 | ・システムの運用・保守・管理を行なうために、専門的な知識を持つエンジニアが必要 ・技術者の確保や人件費の負担も生じる |
サーバー設置の場所を確保しなければならない | ・自社でサーバーを設置するため、サーバールームなどの物理的なスペースを確保しなければならない ・電力消費や冷却コストも考慮する必要がある |
オンプレミスは高額な初期費用が必要なことや、運用に専門的な人材が必要な点が課題です。また、設置場所の確保が必要であり、特にスペースに限りがある企業にとっては大きな負担となります。
ここからは、クラウドのメリット・デメリットについて解説します。
◇メリット
クラウドのメリットは次のようになっています。
メリット | 概要 |
---|---|
導入から運用までのスピードが速い | インターネット経由で利用できるため、物理的な機器の準備が不要であり、迅速にシステムを導入・運用開始できる |
初期投資を抑えられる 柔軟性がある |
・オンプレミスと比較して初期費用を大幅に抑えられる。従量課金制のプランを選択すると、使用した分だけ費用が発生する ・変化に合わせてリソースをスケールアップ・スケールダウンできるため、コスト効率が良い |
専門知識を持った人材が不要 | インフラの運用・管理はクラウド事業者が担当するため、社内に専門知識を持ったエンジニアを確保する必要がない |
クラウドの大きなメリットは、迅速な導入スピードとコスト効率の良さにあります。また、運用管理をクラウド事業者に任せられるため、自社で専門の人材を確保する必要がなく、運用負担を大幅に軽減できます。クラウドは、リソースに限りがある企業にも適した選択肢です。
◇デメリット
クラウドのデメリットは次のようになっています。
デメリット | 概要 |
---|---|
セキュリティ面をクラウド事業者に依存する | クラウド事業者が提供するセキュリティ対策に依存する形となるため、自社内での独自の対応が難しい場合がある |
カスタマイズ性が低い | 多くの利用者向けに標準化されているため、自社の特定のニーズに合わせたカスタマイズが難しい場合がある |
クラウド事業者依存のリスクがある | 単一のクラウド事業者に依存するとクラウド事業者ロックイン状態※に陥り、柔軟性が失われるリスクがある クラウド事業者のシステム障害やメンテナンスによって、一時的にサービスが利用できなくなるリスクがある |
※特定のクラウド事業者の製品やサービスに強く依存し、他社への移行が困難になる状態。
クラウドにはセキュリティ管理をクラウド事業者に依存する側面があり、自社で制御しにくい点がデメリットの一つです。また、カスタマイズ性が限定されるため、業務に特化した柔軟な対応ができない場合があります。さらに、サービス停止のリスクは自社のビジネスに重大な影響をおよぼす可能性がある点にも留意しなければなりません。

昨今、企業の社内管理システムにおいては、クラウド型のシステムが急速に普及し、選ばれるケースが増えています。その理由としては、コスト効率の良さや導入スピードの速さなどが挙げられます。
情報管理体制が厳格な金融・保険などの業界でも徐々にクラウドが選ばれている傾向が見られます。一方で、オンプレミスも企業・業界特性によってはニーズに応じて選択されていますが、全体としてはクラウドの需要が増加している状況です。
ただし、一部では一度クラウドを導入したにもかかわらず、セキュリティなどの理由でオンプレミスに戻す企業もあり、社会情勢や企業・業界の特性により流動的となっている側面も見られます。
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オンプレミスはセキュリティ機能やカスタマイズ性の高さが魅力ですが、導入コストが高く運用負担も大きい点が課題です。一方、クラウドは初期費用を抑えつつ迅速に導入できるため、中小企業やスタートアップに適した選択肢ですが、セキュリティ機能やカスタマイズ性に制約があります。
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