◆原価管理とは?目的や生産管理との関連性

原価管理は、企業が利益を最大化するために、製品の製造コストを正確に把握・分析し最適化を図る業務です。原価管理では、目標となる製造原価(標準原価)を設定し、実際にかかった製造原価(実際原価)との比較を行ないます。その差異の分析・改善を繰り返すことで、無駄なコストの削減を実現するのがおもな目的です。また、生産管理と密接に関係しており、適切な資源配分や効率的な工程管理を支援する役割も担います。
本記事では、原価管理の概要や種類についても解説します。

原価管理とは、製品の製造やサービスの提供にかかるコストを正確に把握・分析し、効率的な経営判断を促す手法です。原価管理は製造業のみならず、建設業、広告業、IT業界など多岐にわたる業種で導入されています。原価には、原材料費だけでなく、人件費や経費など、製品の生産やサービスの提供にかかわる直接的・間接的な費用全般が含まれます。
原価管理は、まず過去の実績などをもとに目標となる原価(標準原価)を設定し、実際に発生したコスト(実際原価)と比較・分析するプロセスを繰り返して利益改善を図るのがおもなフローです。これにより、損益分岐点を把握し、どのくらい製品などを製造すれば利益が出るのかを明確にできます。さらに、各製品の採算性を把握し、的確な利益目標や予算を立てることが可能となります。
製造原価とは、製品を製造するためにかかったすべての費用を指します。これらの費用は、以下のように「直接費」と「間接費」に分類されます。
【直接費】
項目 | 概要 |
---|---|
直接材料費 | 製造に使用する原料や資材などの費用 |
直接労務費 | 製品製造に直接関連する作業者の人件費 |
直接経費 | 外注費など、製品製造に直接関連するそのほかの費用 |
【間接費】
項目 | 概要 |
---|---|
間接材料費 | 燃料や分析試薬などの補助材料、潤滑油やウエスなどの消耗品、ドライバーやレンチなどの消耗工具など |
間接労務費 | 製造に直接かかわらない作業者の人件費 |
間接経費 | 設備の減価償却費や水道光熱費など、製造活動を支えるための一般的な経費 |
上記のように、製造原価を直接費と間接費に分けて詳細に把握することで、コスト管理や利益分析をより精緻に行なえます。
原価管理の主な流れについては以下の通りです。
1. 標準原価の設定
2. 実際原価計算
3. 差異分析
4. 改善
ここでは、上記の流れについて解説します。
◇標準原価の設定
原価管理の第一歩として、標準原価の設定が重要です。標準原価とは、製品の製造やサービスの提供に先立って設定される目標となる製造原価を指します。標準原価は、その厳格度や設定基準により、おもに以下の4つに分類されます。
分類 | 概要 |
---|---|
理想標準原価 | 製造原価を高める要因となる非効率な工程や無駄なコストをすべて排除し、最も効率的な条件下で達成可能な理想の原価 |
現実的標準原価 | 通常の業務において達成可能とされる標準原価 |
正常標準原価 | 過去の実績データを統計的に平準化し、将来の予測を加味して設定される標準原価 |
基準標準原価 | 長期間にわたり固定的に使用されることを前提とした標準原価 |
上記の考え方を踏まえつつ標準原価を適切に設定し、実際の製造原価(実際原価)と比較・分析することで、コスト管理や利益改善のための具体的な施策の立案が可能となります。
また、見積原価計算との違いについても考慮が必要です。見積原価は標準原価と同じような流れで算出されますが、過去の製造実績や現在の状況を基準にする標準原価とは異なり、経験や知識をもとに将来のコストを予測して計算します。
◇実際原価計算
実際原価計算は、製造工程で実際に発生したコストをもとに製造原価を求める方法です。製造が完了したあとに、費目ごとに実際の支出を集計し、それらを直接費と間接費に分類して、間接費を各製品の原価へ適切に振り分け総製造原価を正確に算出することがおもな目的です。
実際原価計算を実施すれば、実データに基づいた正確なコスト管理が実現できます。一方で、データ収集や集計に時間や労力を要するため、人手のみでの管理は煩雑な作業が必要となる側面もあります。
実際原価計算を適切に行なうことで、各製品のコスト構造をより詳細に把握でき、経営戦略や利益計画の最適化を図れます。
◇差異分析
原価管理の重要なプロセスの一つに、標準原価と実際原価を比較し、その差異を分析する「差異分析」があります。この分析により、計画と実績の間に生じたコストの差異を明らかにし、原因を特定することで、今後の改善策を導き出すことが可能です。
差異分析では、まず標準原価と実際原価を比較し、どの程度の差異が発生しているかを確認します。標準原価より実際原価が低ければ、コストが想定より抑えられたことを示し、逆に高ければ、予想以上にコストがかかったことがわかります。この差異を詳細に分析することで、無駄な費用がかかっている工程や非効率な費目を特定でき、改善の方向性を見出すことが可能です。
◇改善
差異分析によって明らかになった課題に対して、具体的な改善策を検討し、実行することが原価管理の重要なステップとなります。例えば、労務費が高い場合、一部の作業を外部に委託する、設備投資によって作業を機械化するなどの対策が考えられます。また、材料費が高騰している場合、より安価な材料への切り替えなどが有効です。
これらの改善策を実施したあと、再度標準原価と実際原価を比較し、継続的な課題解決を目指します。このように、原価管理のプロセスを繰り返し行なえば、コスト削減と利益向上を達成できます。

生産管理とは、生産計画に基づき、製品の製造にかかわるすべての管理業務を指します。生産管理のおもな目的は、ものづくりにおける「品質(Quality)・原価(Cost)・納期(Delivery)」、通称「QCD」の最適化です。これは、顧客の「良いものをなるべく安く、必要なタイミングでほしい」という要望に応え、顧客満足度を向上させて企業の競争力を高めることを目指しています。
生産管理は以下の多岐にわたる業務を含みます。
● 需要予測
● 生産計画の立案
● 在庫管理
● 品質管理 など
上記の業務を総合的に管理し、最適化することで、生産効率の向上と無駄なコストの削減を実現します。適切な生産管理の実施は、企業の持続的な成長と市場での優位性確保に不可欠であり、競争が激しい現代のビジネス環境において、その重要性はますます高まっています。
生産管理システムとともに原価管理システムを導入することで、さまざまな面でメリットが得られ、業務効率化が期待できます。ここでは、生産管理システムと原価管理システムの特徴や活用方法などについて解説します。
◇生産管理システムの導入効果
生産管理システムの導入は、原価管理を含む製造業務全般の効率化と精度向上に寄与します。生産管理システムは、納期や在庫状況など製造現場の工程情報を一元的に管理する仕組みを提供するのが特徴の一つです。
表計算ソフトを用いてこれらの情報を管理することも可能ですが、生産管理に特化したシステムの導入により、より高度な課題解決が期待できます。特に、原価管理機能を備えたシステムを導入すると、製品ごとの製造原価を正確に算出でき、コスト削減や利益率向上のための戦略立案が可能となります。
◇生産管理システムと原価管理の関係性
生産管理システムを導入すると、生産現場における納期や在庫状況、作業工程の情報を一元的に管理できるため、業務の可視化が進み、スムーズな生産体制を構築できます。特に原価管理の面では、データ化されることで帳票の表示や出力が容易になり、複雑な原価計算の手間を大幅に削減可能です。
また、生産管理システムには業務の短縮や効率化を支援する機能も備わっており、担当者の作業負担を軽減できる点も大きなメリットです。例えば、原価計算だけでなく、在庫管理や発注処理の自動化を組み合わせることで、業務全体の効率が向上し、労務費の削減にも貢献します。生産管理システムの導入によって、情報の正確性が向上するだけでなく、関係者間での共有が容易になり、よりスムーズな意思決定が可能になる点も企業にとって大きなメリットといえます。
◇生産管理システムのデータ活用
生産管理システムの導入により、以下のように標準原価や実際原価の管理が効率化され、差異分析や改善策の立案が容易になります。
項目 | 概要 |
---|---|
標準原価の設定 | 配合表・部品構成表(BOM)を作成し、材料の購入費や外注費、各製造工程の標準工数を設定することで、標準原価を自動的に算出可能 |
実際原価の算出 | 製造や購買の実績データをもとに、品目別の実際原価を生産管理システム内で計算できる |
差異分析 | 標準原価と実際原価の差異を生産管理システム上で把握し、どの工程や項目でコストのズレが生じているかを分析できる |
改善措置の立案 | 差異分析の結果をもとに、必要な原価改善策を策定し、実行に移せる |
生産管理システムを活用すれば、上記のように原価管理の各段階におけるデータ活用が促進され、企業の競争力強化につながります。
■原価管理を効率的に行なうならJIPROS
医薬品や化粧品、健康食品製造業において、原価管理を自動化し、効率的に行なうためには、ERP(Enterprise Resource Planning)システムの活用が有効です。そのなかでも「JIPROS」は、医薬品や化粧品、健康食品製造業様向けに特化したERPシステムです。
JIPROSは、GMP(Good Manufacturing Practice)対応が求められる企業向けに、生産管理や原価管理の機能を標準装備しています。これにより、製造現場の実績情報と間接費をもとに原価計算を実行し、製造や購買の実績データを活用して月次で原価計算処理を行ない、品目別の実際原価を算出できます。
さらに、標準原価に対する実際購入費用や使用量などの原価差異を把握でき、これらの分析結果をもとに、必要な原価改善策の立案も可能です。 また、JIPROSは、導入時や導入後のサポートも充実しており、初めてのシステム導入でも安心して利用できます。
JIPROSは、医薬品や化粧品、健康食品製造業の生産管理と原価管理を効率化し、企業の競争力向上に寄与するERPシステムとして役立ちます。
生産管理と原価管理は、製造業における重要な業務です。原価管理は、標準原価と実際原価を比較し、差異を分析することで、コスト削減や業務改善のための指針を提供します。一方、生産管理は、品質・原価・納期(QCD)を最適化し、効率的な生産体制を確立するための手法です。
特に、医薬品や化粧品、健康食品製造業は、GMPに対応した厳格な品質管理が求められる業界で、適切な原価管理が事業の成否に影響を及ぼします。そのような業界に適したERPシステムとしておすすめなのがJIPROSです。JIPROSは、GMP対応が必要な業界向けのERPシステムとして、生産管理と原価管理を統合し、品目別の原価計算や差異分析を自動化できます。導入時や運用後のサポートも充実しており、初めての導入でも安心です。GMP関連製造業で生産管理システムを検討されている方は、ぜひ一度お問い合わせください。